人の幸福度を決まる要素―ハーバード大学による75年追跡研究

世界中で今猛威を振るっているコロナは人類史上最悪の疫病になりました。それにより人人の生活習慣は新しいライフスタイルに移行せざるを得なくなり、これまでの常識が通用しない時代になってきました。その目まぐるしく変化する社会に不安を強く感じる人もいます。
どう予想しても人生絶望しか見えない
— 他人の幸は毒の味 (@yamaadaaa_) May 13, 2021
多様化がこれからますます進んでいく社会の中でどのような選択・決定をしていくことが自分の人生にいいのかがわかりにくい時代と来ました。
”あなたの人生を幸福にするものは何だと思いますか?”
- 多額のお金や資産?
- 有名になることや名声?
何を優先した決定をしていくことが自分の人生を豊かにし、幸福度を高めるのかについて長期にわたって追跡研究したハーバード大学の研究結果についてご紹介します。
もくじ
幸せに関するハーバード大学による75年もの追跡研究
以下の内容は、2015年11月、研究で明らかになった「人生を幸せにする教訓」についてTEDトーク(何によって人生は豊かになる?幸せに関する長年の追跡研究で得た教訓 / What makes a good life? Lessons from the longest study on happiness)に基づいての記事になります。
※ 以下の内容は、2015年11月、研究で明らかになった「人生を幸せにする教訓」についてTEDトーク(何によって人生は豊かになる?幸せに関する長年の追跡研究で得た教訓/What makes a good life? Lessons from the longest study on happiness)に基づいての記事になります。
この研究は1938年に開始され、研究対象として2つのグループに分けられました。
- 当時ハーバード大学2年生の男子学生(268人)
- ボストンの極貧環境で育った少年たち(456人)
合計:724人
※ この研究対象者のうち、約60人が健在(2015年の時点)で、そのほとんどが90代。
ボスとの極貧環境の家庭の少年たちの中には戦争で貧しく、家ではお湯が出る設備もない家に住んでいた少年たちが含まれています。
この調査の被験者全員に毎年以下のことを行なっていました。
- 本人とその家族へのインタビュー(開始時のみ)
- 健康診断を受けてもらう(開始時のみ)
- 質問票による調査
- 本人とその家族への聞き取り
- 医療記録の提出(血液検査結果、脳のスキャン画像 etc)
なぜここまで徹底的に幸せに関する追跡研究を行なったのか?
研究調査は定期的に各地で行われていますが、その内容がその場限りの内容だったり、大抵昔のできごとは正確に記憶できているとは限りません。そのときの感情によって、事実でないのに事実であるかのように記憶が修正されてしまうことが珍しくありません。
また、特定の人の若い10代から老年期になるまで幸せと健康の持続に関しての研究はかなり多くの難題があります。研究資金が不足がちになったり、研究者自身が他のプロジェクトで忙しくなって途中で離脱してしまうことがしばしばあります。
また、長期的な研究の場合、研究者もいくつかの世代を跨がないと結論を出すことができません。ただ単に聞き取り調査をするだけではなく、その裏付けとなる健康診断の具体的なエビデンスを分析するために膨大な時間がかかります。
この研究ではまさにそうした難題を乗り越え、世代を超えて研究者たちの執念で導きだした研究結果で、かなり精度の高い研究結果の内容です。。
被験者者たちはどんな人生を送ったのか?
被験者たちはそれぞれ様々人生を歩みました。工場職人、レンガ職人、医師、弁護士など就いた職業はさまざまです。被験者の1人はアメリカの大統領にもなったようです。
その一方で、アルコール中毒症になったり、統合失調症などの重い病気を患い、幸福を感じるのが難しい人生を送った人もいました。
人を幸せにする要素はお金?名声?
ハーバード成人発達研究の4代目ディレクターを務めるRobert Waldinger教授(臨床精神医学)が語った教訓はシンプルなものでした。

Robert Waldinger教授
the clearest message that we get form this 75-year study is this: Good relationship keep us happier and healthier.
和訳:75年間の追跡研究ではっきりわかったことはこれです。人との良い関係が人を幸福にし、健康を維持されるということ。
ロバート教授は「孤独は命取り」とも表現しています。孤独が害になるという研究結果も出ています。
孤独を甘んじて受け入れた生活をしている人は幸せを感じにくく、その人が中年になったとき健康の衰えが早く、脳機能の減退も早く始まり、孤独でない人に比べて寿命は短くなります。
結婚していれば幸福の敵の孤独から開放される?
人間関係と健康に関してわかった2つ目の大きなことは。「周りとの関係の質が重要である」ということです。
孤独は独身か既婚かに関係なく、わたしたちのまわりに常に付きまといます。家族と一緒に住んでいても、恋人と付き合っていても、コミュニケーションの質によっては、孤独を感じることは決して珍しいことではありません。
また、SNS上でフォロワーが何人いるか、自分の知人がどれほどいるかは全くその人の幸福度に比例しません。その人の友達の「数」は問題ではありません。一番大事なことは、「自分にとって大事にしたい人との関係性、その質」です。
愛を感じることが少ない関係性の中で維持される人間関係は人を幸福にしません。それに我慢し、自分の感情を抑圧し続けることによって精神的にも身体的にも有害な影響を与え得るものです。愛情のある関係は人の心と体を「保護」します。
50代の幸福度は80代の健康に比例する?
この研究チームが得た情報から他の興味深い結果がわかったそうです。
「50歳で最も幸せな人間関係にいた人が 80歳になっても一番健康だった」
研究チームは50代のころに得た彼らのデータをすべて集めて分析した結果、 中年のコレステロール値等とは関連性はなく、どのような老年を迎えるかは人間関係の満足度で予測されることがわかったそうです。
中でも特にパートナー共に幸福だと感じていた人達は80代になり身体的苦痛があっても、精神的に幸福だという結果だったとのことです。その一方で、不幸な関係にある人達はその精神的苦痛でその身体的苦痛がさらに増幅されることもわかったようです。
良い人間関係は脳も守ってくれる
人間関係と健康に関してわかった三つ目の大きなことは 良い関係は身体の健康だけでなく、 脳も守ってくれるということです。
自分にとって心が開けて、何かあったときに本当に頼れる人がいる場合、その人の記憶ははっきりしています。その一方、パートナーに全く頼れないと感じている人は記憶障害が早く現れ始めたようです。
良い人間関係いといっても波風がないわけではもちろんありません。いつもたとえ小言を言うようなことがあっても、心の中での信頼関係があるならば、苦難に遭遇したとき口論しても後々まで残るということはないみたいです。
人生は心から内を打ち明けられる人を大事にし、その友情を強めること
今回取り上げた研究結果の中でもあったように、いくらお金を持っていても、有名であったとしても、継続的に幸せを感じられる要因ではないようです。
もちろん多くのお金をもらえることや人に知られることで自己肯定感を満たすことを一定期間はできるはずです。
しかし、一定期間が過ぎると人の状況は変わり、それらのものは必ずしもわたしたちの幸福をもたらすとは限りません。
地味ではありますが、少人数でも、いや一人でもいいからいつまでも良い関係を保つことができる友人やパートナーを持つが長期的に見てわたしたちの幸福につながると私も思います。
あなたは誰とそうした関係を築いていますか?
人生どんなに絶望してても
好きな人が1人出来れば
見るもの全てが輝き出す。人間なんてそんなもん^^
— 恋の法則 (@_Kapihapi_L_) May 13, 2021
ロバート教授の講演動画(日本語字幕あり)
調査結果の結論部分は5:41~からご覧になれます。